リコーに学ぶ 時短/フルタイム社員が混在する職場のマネジメント方法
「時短人材にコア業務は任せられない」「時短勤務はマネジメントが煩雑」と考えている企業が多い中、専門性を活かし時間を凝縮して働く人材が活躍する企業があります。それが事務機器大手リコーです。グローバル企業としての歴史が長い同社では、必要なスキルを備えていれば時短/フルタイム勤務にかかわらず活躍できる環境が整っています。では、このような柔軟な働き方をどうやって実現しているのか。GMA販売本部GMA事業計画室室長を務める山之内麻利子氏に、マネジメントのノウハウを聞きました。
グローバルビジネスの知見がある即戦力人材が欲しい
リコーでは、日本、米州、欧州、アジア・パシフィックの4極体制により、世界約200の国と地域で事業を展開しています。そうした中、わたしが管轄するGMA事業計画室では、海外顧客を対象とした販売支援を主に行っています。営業部隊がお客様との商談時に使用する営業資料の作成、各国・地域に適した価格設定および契約条項の整備が主な役割となります。
アジア・パシフィック地域の販売支援チームは、東京を拠点に約30名が活動していますが、組織強化のために新たな人材を探していました。求めていたのは、グローバルビジネスの知見がある人材です。現地のお客様や営業スタッフとコミュニケーションを取ることが多いため、当然、英語力は必須となります。また、日本の常識で物事を考えるのではなく、異なる文化にも対応できる柔軟性が求められます。実際、仕事の進め方や管理の仕方は、国・地域によって異なるので、マルチカルチャーへの対応力は欠かせません。
その上で即戦力であることが求められていました。短時間で採算シミュレーションを行ったり、データ分析をしたりする必要があるため、プログラミング、マクロ、データ処理のスキルが不可欠です。したがって、これらの条件に合った人材を探すことは容易ではないと考えていました。
そうした中、人事部の紹介で、高い専門スキルを活かして、時短で働く「ZIP WORK」という働き方を知りました。この働き方を推進するリクルートスタッフィングに問い合わせた結果、条件に合致した即戦力となる人材をすぐに紹介してもらうことができました。
「ZIP WORK」とは限られた時間で成果を出す新しい働き方です。|詳細はこちら
重要なのは勤務時間よりも生産性
わたしは、2000年代初頭に米国で5年ほど勤務していました。日本では近年「働き方改革」が話題になっていますが、米国では当時から在宅勤務など男性も女性もライフスタイルに合わせてフレキシブルな働き方をすることが当たり前になっていました。現在欧米では、社員もマネージャークラスも、パートナーや顧客などの他社でも、時短勤務の社員は何人もいます。
リコーはグローバル企業として長期にわたり事業を展開しているため、そのような働き方を受け入れる体制が浸透しています。当然、時短勤務だからといって業務に支障が出ることがないように、適切に分業とジョブアサインが行われています。わたし自身もそのような職場で働いてきたので、ライフステージにおいては出産や育児、介護など、フルタイムで働くことができない時期があることを、経験を通じて理解しています。したがって、時短勤務の人材を受け入れることに違和感はありませんでした。
また、GMA事業計画室の場合、海外とのやり取りが多いため、時差の関係もあって時間的な制約はさらに大きくなります。そうした中で生産性を高めるには、タイムマネジメントが欠かせません。私見ではありますが、時短勤務の方は総じて目的意識が高く、残業をしなくても確実に成果を上げてくれるという印象があります。限られた時間で業務をこなす必要があるため、自然とタイムマネジメント意識が高くなり、それが成果につながりやすいのかもしれません。
「フルタイム勤務は時間的な制約がないから仕事を任せやすい」という声を聞くこともありますが、わたし自身はそうは思いません。フルタイム勤務であっても労働時間には制約があり、その中で成果を上げる必要があります。つまり、フルタイム勤務か時短勤務かに関係なく、誰もが限られた時間で働いていることを認識するべきだと考えています。
ITツールの活用で時間や場所を“制約”にしない
フルタイム勤務と時短勤務の社員が混在するチームをマネジメントする上で重要になるのは、相互の情報共有です。不在のメンバーに代わって誰でも仕事を引き継げるように、チーム内での連携は欠かせません。わたしたちのチームでは、共有データベースを整備するとともに、コミュニケーションツールを活用することで、時間と場所を越えた連携を実現しています。
また、誰が何の役割を担っているのかをチームメンバー全員が把握することも重要です。そのために、各自のジョブディスクリプションを明確にし、業務の進捗状況とともにチーム内で共有しています。そうすることで、各メンバーが専門性を活かして成果を上げることに集中できるようになり、自分自身の時間の使い方を工夫するようになるという副次的な効果もあります。
現在も、時短勤務をポジティブに捉える企業は多くないと思います。物理的にそこにいない社員をどのようにマネジメントしたらいいのかという心理的な負担が大きいことが背景にあるのかもしれません。かつてはわが社でも少なからずそういった不安の声はありましたが、ITツールの進化もあり現在は解消しています。仕事をするうえで時間や場所は制約にはならないということを証明していきたいですね。
[会社概要]
会社名 : 株式会社リコー
設 立 : 1936年2月6日
本 社 : 東京都大田区
代表者 : 代表取締役 社長執行役員 山下 良則
資本金 : 1,353億円(2019年3月31日現在)
連結売上高 : 2兆132億円(2019年3月期)
連結対象子会社・関連会社 : 220社(2019年3月31日現在)
主な事業内容 : オフィスプリンティング、オフィスサービス、商用印刷、産業印刷、サーマル等
連結従業員数 : 92,663名(2019年3月31日現在)
URL : https://jp.ricoh.com/